分析化学
Print ISSN : 0525-1931
年間特集「粒」: 報文
水性二相流を利用するマイクロチップ電磁泳動法による微粒子の連続分離
飯國 良規田村 零央北川 慎也大谷 肇
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2019 年 68 巻 10 号 p. 743-750

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抄録

マイクロ流路中に形成した導電性/非導電性水性二相流中における,電磁泳動に基づく微粒子の輸送制御法を開発した.入口を二つ,出口を二つ持つ両Y字型マイクロ流路(幅160 μm,長さ20 mm)に対して導電性溶液として1.16 mol L−1塩化カリウム(KCl)水溶液を,非導電性溶液として20% デキストラン(dextran, Dex)水溶液をそれぞれ別の入口から送液することで,マイクロ流路中に安定した導電性/非導電性水性二相流を形成することが可能であった.この水性二相流の導電性溶液中に分散させたμmオーダーのポリスチレン(PS)粒子とカルボキシル基修飾ポリスチレン(cPS)粒子を,一つの永久磁石を用いた電磁泳動により二相流界面方向へ泳動させたところ,PS粒子は二相流界面に位置的収束され,cPSは非導電性溶液であるDex水溶液中まで移動した.これは微粒子表面の疎水性の違いを反映した結果である.さらに二つの永久磁石の極性を逆向きに配置することで,極性の異なる二つの磁場を局所的に印加する異極並列磁場により,微粒子を水性二相流中において電磁泳動により一旦界面方向へ泳動させたのち逆向きに泳動させたところ,界面に収束したPS粒子は導電性溶液中に再分散され,cPS粒子は非導電性溶液中に留まり,それぞれ別の出口から連続的に回収することが可能であった.

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© 2019 The Japan Society for Analytical Chemistry
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