分析化学
Print ISSN : 0525-1931
総合論文
ポータブル全反射蛍光X線分析装置を用いる微量元素分析法の改良
国村 伸祐菅原 悠吾徳岡 佳恵青野 海奈杉岡 大志郎袋井 祐佳寺田 脩一郎
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2019 年 68 巻 5 号 p. 325-332

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抄録

本稿では,これまでに著者らが行ってきたポータブル全反射蛍光X線分析装置を用いた微量元素分析法の改良に関する最近の研究成果について述べる.低真空下で全反射蛍光X線スペクトルの測定を行い空気による入射X線の散乱を低減させることにより,スペクトルのバックグラウンドを大幅に低減させ検出限界を改善する方法を概説し,空気中及び低真空下で測定したスペクトルの比較例及び2 ngのセレンを含む試料の低真空下での測定例を示す.コバルトイオンを有するシアノコバラミン(ビタミンB12)の固相抽出を行い分離濃縮したビタミンB12に由来するCo Kα線を測定することにより,ビタミンB12を分析する方法及びこの方法を用いることにより,ng mL−1(μg L−1)レベルのビタミンB12分析が行えることを概説し,市販のビタミンB12を含む錠剤を測定した例を示す.また,固相抽出はアルミニウムの検出感度を向上させるためにも有効であることを示し,茶浸出液中のアルミニウムを測定した例を示す.さらには,高塩分試料の微量元素分析を行うための前処理として固相抽出が有効であることを概説し,本装置と固相抽出カラムを組み合わせて利用する方法を用いてμg L−1レベルのマンガン,鉄,銅及び亜鉛を含む高塩分試料を測定した例を示す.

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© 2019 The Japan Society for Analytical Chemistry
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