分析化学
Print ISSN : 0525-1931
技術論文
多品目の薬物を対象とする病院内での血中濃度測定のための実用的なHPLC分析法の開発
森川 剛﨤町 美穂田村 和季守岩 友紀子東海林 敦岡澤 香津子柳田 顕郎
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2019 年 68 巻 7 号 p. 473-481

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抄録

医療機関における血中薬物濃度定量に基づく治療薬物モニタリング(TDM)の実施は,投与された薬物の治療効果や副作用を見極めるうえで重要であるが,その定量分析法は薬物ごとに異なり,複雑な前処理や特殊な試薬・機器類が必要な手法も多いため,医療機関内でのTDMの実施は決して容易な業務ではない.今回著者らは,多品目の薬物に対して,ほぼ同一手順の前処理操作と単一装置でのHPLC分析を行う,迅速で実用的な血中濃度定量法を考案した.具体的には,まず薬物ごとに,遠心用スピンカートリッジを用いる前処理(固相抽出)条件と,逆相HPLC/UV検出条件を最適化した.さらに,各薬物添加血清を用いて上述の前処理とHPLCを行い,血清からの薬物回収率を補正したうえで,薬物標準液を用いる絶対検量線法に基づく定量法として最適化した.本法は15品目の薬物の血中濃度定量に適用でき,各薬物の定量下限値は0.1〜1.5 μg mL−1の範囲であった.各薬物の治療有効濃度領域内での定量バリデーションも良好であり,本法は,病院の常勤スタッフ(臨床検査技師や薬剤師)が日常的に実施する院内測定法として有用と考えられる.

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© 2019 The Japan Society for Analytical Chemistry
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