分析化学
Print ISSN : 0525-1931
年間特集「質」: 報文
超薄層クロマトグラフィー用の水平式ミニチュアTLC展開槽の試作と評価
今崎 龍之介近藤 啓太谷 夏海青木 元秀熊田 英峰内田 達也長縄 豪嶋田 泰佑田口 嘉彦佐藤 浩明安井 隆雄梅村 知也
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2020 年 69 巻 10.11 号 p. 553-558

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抄録

薄層クロマトグラフィー(TLC)における分離場のミニチュア化(薄膜厚の低減と展開長の短縮),なかでも薄型化は,希少・微少量の試料での分析が求められるオミックス研究において不可欠である.しかし,TLCの薄型化により,展開溶媒が薄膜からより一層蒸散しやすくなるため,再現性が低下することが危惧される.そのため,ミニチュア化TLCに特化した周辺ツールが必要となるが,そうした環境が十分に整備されていないのが現状である.そこで本研究では,TLCの信頼性と再現性を確保するために,誰にでも確実かつ簡便に溶媒飽和と展開を行える密閉性に優れたミニチュアTLC展開槽(50 mm角と25 mm角のプレート用)の作製を試みた.試作した展開槽の評価については,まずは一般的なシリカゲルTLCガラスプレート(薄膜厚200 μm)を用いて行った.試作した水平式ミニチュア展開槽が市販の縦型二槽式展開槽(100 mm角のプレート用)と遜色のないTLC分離を行えることを示すとともに,本ミニチュア展開槽では,槽内の空間体積を極力抑えたことにより,溶媒飽和に要する時間や展開溶媒の使用量をこれまでの1/3程度に削減できることを確認した.さらに,超薄層プレート(薄膜厚<10 μm)でも本展開槽を適用できるか検証するため,水熱合成法により薄膜厚が5 μmの酸化亜鉛製のナノワイヤアレイプレートを作製し,本展開槽によるTLC分離を試みた.酸化亜鉛製のナノワイヤに適した展開溶媒に関しては,まだ試行錯誤の段階であるが,ニュートラルレッドやナイルレッド等の合成色素を再現性よく分離できることを確認した.試作した水平式ミニチュアTLC展開槽は超薄層クロマトグラフィー(UTLC)を実施するための有力なルーツとなりうることが期待される.

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© 2020 The Japan Society for Analytical Chemistry
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