分析化学
Print ISSN : 0525-1931
総合論文
抗原−抗体反応を用いる分析技術の開発
三宅 司郎
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2020 年 69 巻 6 号 p. 237-245

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抄録

抗原−抗体反応を用いる分析技術は,医学や生命科学において目覚ましい発展を遂げた.しかし食品中の農薬やカビ毒といった疎水性の低分子化合物については,タンパク質である抗体が有機溶媒の影響を受けやすいため実用化が進まなかった.著者らは,これらの化合物を対象に抗体を作製し,分析技術への応用を試みた.その結果,モノクローナル抗体の一部に有機溶媒耐性を見いだし,残留農薬測定用のELISAやカビ毒クリンアップ用のイムノアフィニティーカラムを開発した.さらに,表面プラズモン共鳴イムノセンサの導入により,ELISAでは困難だった農薬の多成分同時分析法を確立した.その後,このイムノセンサを用いて大腸菌O抗原の検出を試みたが,O抗原がセンサ上の抗体と多点で結合するため信号検出後の菌の除去が困難だった.著者らは,従来法から視点を変えたゲルによる物理的な方法で菌を除去し,抗体の機能を維持したセンサの再生に成功した.この方法は,動物細胞の検出と再生にも応用できた.

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© 2020 The Japan Society for Analytical Chemistry
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