分析化学
Print ISSN : 0525-1931
技術論文
血液一滴分析を実現する液体ハンドリング技術の開発
安藤 貴洋平野 匡章石毛 悠足立 作一郎
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 69 巻 6 号 p. 299-304

詳細
抄録

創薬分野,診断分野をはじめとして,分析対象とするサンプル量の微量化が年々進んでいる.血液のような限られた量のサンプルから正確に成分濃度を分析するためには,溶液を精度よく分けて試薬等と混合する技術が求められる.本研究では,高精度ニッケル電鋳パイプを分注チップに用いた定容積式の液体ハンドリング技術を開発し,10 μL程度の血液一滴から多項目の成分濃度分析ができるかどうかを調査した.電鋳パイプの内径精度を製作公差±0.7 μmに抑え,電鋳パイプ端面に対して酸処理によって表面微細構造を形成し液離れ性を向上させたところ,0.1 μL分注時の変動係数は0.70% となり高精度分注を実現した.さらに,動物血清を反応容器に0.2 μLずつ分注し,グルコースとコレステロールの成分濃度を測定したところ,変動係数はそれぞれ2.38% と1.45% と高い分析精度であった.以上から,電鋳パイプを用いた液体ハンドリング技術により,血液一滴からの多項目分析が行える可能性が示された.

著者関連情報
© 2020 The Japan Society for Analytical Chemistry
前の記事 次の記事
feedback
Top