分析化学
Print ISSN : 0525-1931
総合論文
海洋における炭酸系計測
茅根 創山本 将史朝海 敏昭
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2021 年 70 巻 6 号 p. 301-308

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抄録

地球温暖化の将来と抑制策の鍵となる,海洋の炭酸系の計測可能な四つのパラメーターpH, pCO2, 全炭酸,全アルカリ度の計測技術の現状をまとめた.採水試料を実験室でバッチ計測する技術を,センサーによる現場観測,さらに自律したブイやフロートで自動計測する技術に改良して,点と線の観測から立体・経時観測することが求められる.実用的な計測における最良の精確さは,pH, pCO2, 全炭酸,全アルカリ度それぞれ,0.002 pH, 2〜5 μatm, 2〜4 μmol kg−1, 2〜3 μmol kg−1である.自動計測が実用化されているのはpHとpCO2だが,どちらも炭酸系の極微量成分で,同期して変化するため,これら二つから全炭酸と全アルカリ度を計算すると,それらの計算値の不確かさは,実測値の不確かさより大きくなる.精確に炭酸系を決定することができるpHと全アルカリ度の自動計測システムの開発が期待される.どのパラメーターも,試料試薬を添加したり,気体透過膜でCO2を液相に抽出したのちに,液相のpHを計測することによって求めることができるので,高圧の深海の海水でも安定的なpH計測技術の開発が鍵である.

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© 2021 The Japan Society for Analytical Chemistry
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