近年の宇宙科学研究の進展に伴い,宇宙における生命の存在が科学的に議論されるようになってきた.約40億年前の火星表面には大量の水が存在した.当時の火星は生命が誕生した頃の地球と似た環境であったと推測され,火星にも生命が誕生した可能性がある.現在の火星においても,メタンなどの微生物のエネルギー源や有機物などが見つかっており,生命が生存している可能性がある.金星では,地表から55 km上空の雲の中からホスフィンが検出された.金星でホスフィンが生成される物理化学プロセスが知られていないことから,生命の存在が議論されている.地球以外の生命を検出する方法には,探査機に検出機器を搭載し現場で分析する方法と,試料を地球に持ち帰って分析する方法がある.後者は,実験室の大型機器を使って様々な分析法を行える利点がある.しかし地球に持ち帰れる試料には限りがあることから,現場で生命の兆候を検出することは重要である.本論文では,主に現場での検出法について,これまでに行われてきた生命探査を振り返るとともに,生命兆候の指標となりうる物質と,その分析方法を概観し,将来の生命探査法を考察する.