2021 年 70 巻 6 号 p. 351-362
高圧下での固体中の水素の自己拡散は,実験的な研究手法が限られており,その素過程については不明な点が多い.そこで,ダイヤモンドアンビルセル(DAC)と顕微ラマン分光法による同位体定量分析技術を組み合わせることによって,数万気圧を超える高圧力下での固体の水素拡散係数を測定する方法を開発した.この方法により,20 GPaまでの氷や水酸化物の水素拡散係数の圧力依存性を調べた.本論文においては,技術的な解説を行うのと同時に,いくつかの研究例についても紹介し,明らかになった高圧下での水素拡散の素過程や,高圧水素拡散係数の惑星科学研究への応用についても説明する.