分析化学
Print ISSN : 0525-1931
報文
富士山頂における昼夜別に採取したPM2.5中の無機元素による発生源解明
米持 真一堀井 勇一小西 智也Ki-Ho LEEYung-Ju KIM畠山 史郎大河内 博
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 70 巻 6 号 p. 363-371

詳細
抄録

PM2.5の長距離輸送を解明するため,2017年夏季に富士山頂(標高3776 m)で昼夜別にPM2.5の採取を行い,44試料を得た.水溶性イオン8成分と無機元素成分68元素の分析を行った.水溶性イオンではNH4とSO42−が全イオン合計濃度の67% を占めており,日中(D)が夜間(N)より1.3倍高かった.無機元素のうち1/2以上の試料で検出下限値以上の測定値が得られたのは17元素(Na, Mg, Al, K, Ca, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, As, Sr, Pb)であった.水溶性イオンも含めた21成分について濃度変動の類似性を調べた結果,相関係数(r)≥0.7となった組合せは,日中(D)は土壌,都市汚染,大陸からの長距離輸送を示唆していたが,夜間(N)は長距離輸送のみが優勢であった.As/V比が0.9以上となった4期間はすべて夜間(N)であり,後方流跡線は大陸方面から気塊が直接輸送されたことを示していた.人為起源のV*が上昇した3期間はすべて日中(D)であり,後方流跡線はすべて関西圏と中京圏上空を通過していた.またAs/V*比はこれら地域のPM2.5中As/V比とも整合していた.富士山頂で昼夜別の試料採取を行うことで,長距離輸送の影響をより明瞭にとらえることができた.

著者関連情報
© 2021 The Japan Society for Analytical Chemistry
前の記事 次の記事
feedback
Top