分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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SECにおける多角度光散乱検出器と示差屈折率検出器との間の遅延体積の精密測定法
松本 良憲植田 佳世春日 翔榎本 航之菊地 守也鳴海 敦川口 正剛
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2022 年 71 巻 10.11 号 p. 579-588

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抄録

サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に多角度光散乱光度計(MALS)を取り付けたSEC-MALSは,高分子の重量平均分子量(Mw)や根平均二乗回転半径などの基礎物性値を評価する分析装置として広く利用されている.MALSと示差屈折率計(RI)間の検出器間体積(interdetector delay volume, IDV)の値は測定値の信頼性に関わる重要な装置定数であるが,これまで信頼性高く決定できる方法は知られていない.本論文は,IDV値を信頼性高く決定する方法について報告する.Mwが1万〜110万の標準ポリスチレン(PSt)に対して25℃,流速度(U)を0.1〜1.0 cm3 min−1の範囲で変化させてSEC-MALS測定を行い,IDVに及ぼすUMwの効果について検討を行った.SECカラム内及び検出器間のバンドブロードニング効果がUMwの関数としてまとめられた.IDV値はカラムの理論段高と検出器間で起こる非対称乱れを最小限(U→0及びMw→0)にしたときに信頼性高く得られることが分かった.真IDV値を用いたSEC-MALSは分子量分布が広い試料はもとより標準PStのMwと数平均分子量Mn,さらには微分重量分布関数の絶対値を高精度で与える.

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© 2022 The Japan Society for Analytical Chemistry
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