2022 年 71 巻 7.8 号 p. 399-409
相分離は,物質の相転移に伴い均一相が複数の相に分離される現象である.分析化学においても,前処理方法の強力なツールとして用いられてきた.一方で,相分離により生じる構造的な特性は,材料科学のみならず生命機能の発現などにも強く関与し,その構造物性の評価は幅広い分野において重要な役割を示す.著者はこれまでに水溶液の相分離により生じるナノ・マイクロ構造を分離・計測場として利用する新たな手法論を確立し,これらの空間のキャラクタリゼーションを行ってきた.本稿では,水溶液の凍結に伴う相分離により生じたナノ・マイクロメートルサイズの液相や固液界面を中心に,それらの物性計測とナノ・マイクロ構造を利用した分離・計測手法への展開の二つの観点から,著者らのこれまでの研究内容について包括的に議論する.