2023 年 72 巻 12 号 p. 497-502
小角中性子散乱法はソフトマターのサブミクロンスケールの構造解析に用いられる手法であるが,水素と重水素で散乱長が大きく異なることを利用すると,ダイナミクスの評価にも用いることもできる.著者らはこの手法を使ってリン脂質のベシクル間の移動やベシクル膜内のフリップフロップの速度の計測に初めて成功し,リン脂質の種類によるこれらの速度の違いや,リン脂質輸送タンパク質の脂質輸送活性,膜貫通ペプチドによるリン脂質フリップフロップ誘起効果を明らかにしてきた.現在では多くの小角散乱研究者によってこの手法が実施されている.本論文ではこの手法の詳細と事例を紹介する.