2023 年 72 巻 3 号 p. 87-95
個別化医療の実現には,多種多様な診断マーカーの網羅的な検出が必要である.このような個別化医療を実現するセンサーとして,現在,ナノデバイスを用いた1分子電気計測法が,生物・医療分野でのさまざまなターゲットマーカーを網羅的に同時検出できることから注目されている.このナノデバイスとは,ナノポア,ナノギャップ,ナノピペット,ナノ流路(ナノチャンネル)などのナノ構造を集積化しており,微小電流計測と組み合わせることで1分子検出を行うことが可能となる.この方法の特徴としては,高感度,低コスト,ハイスループット検出,携帯性,大量生産技術による低コスト化,多様な機能・複数センサーの統合が可能などの特徴を有する.本報では,こうしたナノデバイスを用いた1分子電気計測の医療応用に焦点を当て,現状のナノデバイスによる電気計測系での応用例を取り上げるとともに,著者らが進めるナノギャップデバイスによる生体分子センシングを紹介し,将来の個別化医療の実現に本格的に貢献すると期待されるナノデバイスを用いた1分子電気計測技術の現状の課題や将来展望について考察する.