2023 年 72 巻 4.5 号 p. 147-153
X-バンド(9 GHz)電子スピン共鳴(ESR)イメージング装置の改良を行い,皮膚がんのメラノーマに含まれるメラニンラジカルの検出と解析を行った.加えて,メラノーマなどの非侵襲計測に向けた新しい検出器の開発も行い,メラノーマに内在するメラニンラジカルの非侵襲計測の足掛かりを確立した.結果,悪性度の高いメラノーマにフェオメラニンのラジカルの寄与があることやイメージングの画像強度はメラノーマの病期進行とともに強くなることを見いだした.フェオメラニンのラジカルは,得られたスペクトルの超微細結合定数の解析から判定した.また,ほかのメラニンが関与する皮膚疾患では,疾患部位の黒化度とESR強度によい相関関係があることを見いだした.メラノーマの場合,ユーメラニンとフェオメラニンのラジカルの寄与がありより強いESR信号を出したことから,この相関関係からずれた.さらに,誘電体を用い新たに試作した検出器の感度を格段に上げて,パラフィンに包埋されたメラノーマにフェオメラニンラジカルがあると確認できた.