2025 年 74 巻 10.11 号 p. 603-610
水道法における水質基準項目の一つとして陰イオン界面活性剤があり,これに使用できる計量法トレーサビリティ制度(Japan Calibration Service System, JCSS)に基づく陰イオン界面活性剤5種混合標準液の供給が望まれていた.しかしながら,対象成分はアルキル鎖長の炭素数が10〜14からなる5種のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ABS)であり,また,各々が異性体混合物であるため,国際単位系(SI)にトレーサブルで精確な値付けが難しかった.そこで本研究では,5種のABSのモル吸光係数が同一とみなせることを利用して,アルキル基の異なる炭素数ごとに,同一モル質量の成分の総量についてSIトレーサブルに値付けを行う技術を開発した.また,同一モル質量の各ABS溶液の測定から得た面積比を用いたピーク面積値の補正を行うことにより,混合標準液である特定標準液から同じく混合標準液である特定二次標準液への精確な値付け方法を確立した.この技術を用いて供給されるJCSS陰イオン界面活性剤5種混合標準液は,水質基準項目の測定に用いる基準として十分な信頼性を有している.