2025 年 74 巻 3 号 p. 81-92
本研究は,市販のハイパースペクトルカメラを古代のガラス製品へと応用し,着色技法の違いに基づく起源(一次生産地)の推定法を提案するものである.古代の日本列島には海外から膨大な数のガラス製ビーズが流入しており,理化学的な手法によりその生産地や伝来経路の推定が行われる.本研究では古代日本において流通量の多い青色着色のガラス製品に着目し,青色着色剤であるCoとCuの有無をハイパースペクトルカメラによって定性的に識別できることを確認した.さらに,ひたちなか市内の古墳・遺跡から出土した青色のガラス製ビーズの非破壊オンサイト分析へと応用し,着色元素の有無をガラスの組成タイプと対応付けることで,簡易かつ迅速な起源推定が可能であることを示した.