2025 年 74 巻 7.8 号 p. 321-327
抽出試薬としてアセチルアセトン(AA)を用いたポリエチレングリコール(PEG),硫酸ナトリウム,水から構成される水性二相系におけるFe(III),Cu(II),Ni(II),Co(II),Cd(II)イオンの抽出挙動を解析した.二相系のpHの上昇に伴って金属イオンの抽出率は増加し,pH 9でPEGに富む上相にすべて抽出されたが,pH 5ではFe(III)及びCu(II)イオンのみが上相に抽出され,他の金属イオンから分離できることがわかった.金属イオンの抽出順はFe(III)>Cu(II)>Ni(II)=Co(II)>Cd(II) であり,AA錯体の生成定数の順と一致した.pH及びAA添加量に対する分配比のプロットから,各金属イオンはAAが1分子配位して抽出されているものと推測された.また,有機溶媒/水二相系ではAAで抽出できない金属イオンもPEG/硫酸ナトリウム水性二相系では抽出が可能であることを示した.