分析化学
Print ISSN : 0525-1931
総合論文
量子センサの機能化と細胞の物理化学量計測
外間 進悟
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2025 年 74 巻 7.8 号 p. 341-349

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抄録

量子センシング技術は生体や材料科学分野において物理化学的パラメーターを高感度に測定する新規計測手法として注目されている.窒素空孔中心(NVC)を内包する蛍光性ナノダイヤモンド(FND)が示す光検出磁気共鳴(ODMR)は,ナノ領域の温度や磁場などを高精度に計測することが可能である.著者らは,FNDを用いて細胞内の物理化学量を定量的に計測する研究を進めており,FNDの調製,表面修飾,及び細胞内温度・熱伝導率の測定技術を開発した.イオン照射と酸化処理により蛍光化されたFNDは,高分岐鎖ポリグリセロール(HPG)や光重合性脂質(PCL)でコーティングすることで分散性と機能性が向上した.さらに,神経幹細胞の分化過程での温度変化が神経突起伸長を促進するシグナルとして機能すること,細胞内の熱伝導率が水の6分の1程度であることを明らかにした.本論文では,この手法の詳細と応用例を紹介する.

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© 2025 The Japan Society for Analytical Chemistry
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