2025 年 74 巻 9 号 p. 427-436
脱炭素化社会の実現に向けた取り組みにおいて,リチウム系二次電池の重要性は日々高まっている.現状,二次電池の課題として「電池容量の向上」や「充電・放電の高速化」が挙げられる.電解液のイオン輸送特性は,これら課題に深く関与しており,特に電解液中におけるリチウムイオン輸送特性の向上が急務である.従来の理想・希薄溶液論においては,イオンが完全解離し,それぞれが独立に輸送されることが前提とされている.しかし,実際の電解液中ではイオン間及びイオン─溶媒間の相互作用が顕著であり,そのような相互作用を無視した議論ではイオン輸送の詳細な理解には限界がある.したがって,イオン間の相互運動相関を考慮した新たなアプローチが必要不可欠である.本稿では,Onsager輸送係数を用いた濃厚電解液理論により,イオン伝導率・リチウムイオン輸率に代表されるリチウムイオン輸送特性の詳細を解き明かし,イオンダイナミクスの解析に基づいた新規電解液設計の指針を示す.