抄録
ガスクロマトグラフィーによって高沸点の試料を分析することは困難が多いので,別に燃焼管中にて試料を熱分解したのち分解ガスを一度トラップし,あらためてガスクロマトグラフを用いて定量しようという試みがいくつか報告されている.著者らは,それらに代る新しい方法として交流アークを用いて試料を分解し,直接分解ガスを定量する方法を考案した.装置はFig.1に示すように,アーク源,分解セル,ガスクロマトグラフの三部に大別できる.加熱用のアークは高周波弧光回路のスイッチを入れると点火し,切れば消える.試料は(要すれば試薬と混じて)アーク用電極の孔にあらかじめ挿入しておきキャリヤーガスを通じながらこの点火を行なう.この点火(約3~5秒)が常法の試料注入に相当する.Fig.2は基礎実験として,シュウ酸(結晶水2分子)をそのまま供試して得たガスクロマトグラムである.この分解ガスを本クロマトグラフで定量した結果,適当な条件下(ヘリウム気流,銅電極を使用し,試料孔2×5mnm,点火5秒)において試料1.5から6mgまでCO,CO2ともに十分再現性ならびに比例性が存在することを認めた.
以上得られた基礎検討の結果,従来の系外分解法と異なり,本法は操作が非常に簡便であり,しかも短時間に分解が完了するなどの長所を持つことがわかった.適当な試薬を共用することにより多くの熱分解反応に適用できると思われる.実験結果の詳細は別に報告する.