分析化学
Print ISSN : 0525-1931
亜鉛末錠剤・ヨウ化カリウム・塩化第一スズ混合還元剤を用い,ヒ化水素-アルゴン・水素フレーム系による水中のppbレベルのヒ素の原子吸光分析法
山本 勇麓熊丸 尚宏林 康久鎌田 俊彦
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1973 年 22 巻 7 号 p. 876-881

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抄録
ヒ素を亜鉛末錠剤とヨウ化カリウムおよび塩化第一スズとを還元剤に用いてヒ化水素に変えたのち,直接アルゴン-水素フレームに導入するヒ素の高感度定量法を検討した。還元過程の酸性度は2N程度の塩酸あるいは硫酸酸性が適当であった.この酸性度では還元剤として亜鉛を単独に用いた場合はヒ化水素はほとんど発生しないが,ヨウ化カリウムと塩化第一スズを共存させるとヒ素の還元反応が著しく促進され,ヒ素(V)およびヒ素(III)からヒ化水素への還元に大きな正の寄与を示すことがわかった.また,これらの試薬を併用するとヒ素の酸化数に関係なく一定の吸光値が得られた.ヒ化水素ガスの捕集時間は90秒程度でじゅうぶんであり,きわめて迅速に測定できた.検量線は1μg/20ml(50ppb)以下で直線性を示し,1%吸収感度は0.7ppbであった.また,この測定方法の相対標準偏差は2.6%であった.共存イオンの影響についてはヒ素に対してセレンが7倍,鉛,アンチモン,硫化物イオンが150~220倍をこえて共存すると負誤差を与えるほかはほとんどのイオンによる妨害は認められなかった.この方法を諸種の試水の分析に適用して満足な結果が得られた.
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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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