分析化学
Print ISSN : 0525-1931
環境試料中のトリシクロヘキシルスズ化合物のガスクロマトグラフィーによる定量
高見 勝重奥村 為男杉前 昭好中本 雅雄
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1987 年 36 巻 3 号 p. 143-148

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抄録

低交換容量陽イオン交換樹脂を充てんしたカートリッジを試料の前処理に応用し,環境試料中におけるトリシクロヘキシルスズ化合物(TCTC)のGCによる分析法について検討した,水質試料を塩酸酸性とし,TCTCをヘキサンで抽出する.底質試料については,塩酸-エタノールで抽出した後,吸引濾過し,水を加えてヘキサンで逆抽出した.ヘキサン抽出液をアルカリ性エタノール及び水で洗浄,濃縮した後,カートリッジに通して有機スズ化合物を樹脂に吸着させる.保持されている混在有機物をエタノールで洗浄し,塩酸-エタノールでTCTCを塩化物として溶離した.溶離液に水を加え,塩化トリシクロヘキシルスズをヘキサンで抽出し,テトラヒドロホウ酸ナトリウム-エタノール溶液で水素化した.生成した水素化トリシクロヘキシルスズ(TCTH)をヘキサンで再抽出した後,その一定量をGC装置に注入して分析した.TCTHは保持時間で同定,ピーク高さで定量した.本法によるTCTCの定量限界は,水酸化物換算で,水質試料0.5μg/l,底質試料では0.02μg/gであった.又,定量限界の10倍濃度添加した添加回収実験の回収率は水質試料で95~97%,底質試料では86%で,測定値の相対標準偏差はそれぞれ1.4~2.5%,5.0%であった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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