抄録
ジフェニルチオカルバゾン(ジチゾン)とモノチオテノイルトリフルオロアセトン(STTA)を抽出試薬に用いて,銅(II),亜鉛(II),カドミウム(II)の抽出定数を各温度で求め,ファントホッフプロットから各抽出平衡のエンタルピー変化とエントロピー変化を見積もった.その結果,ジチゾン抽出系では亜鉛(II)は吸熱的であり,大きな正のエントロピー変化が反応の推進力になっているのに対して,カドミウム(II)は発熱的で抽出がエンタルピー支配で進行していることが分かった.一方,銅(II)の抽出は発熱的で大きな正のエントロピー変化を与えたことから,銅(II)の抽出定数が亜鉛(II)よりも大きいのは主としてエンタルピー的に,カドミウム(II)よりも大きいのはエントロピー的に有利なためであることが分かった.また,STTA抽出系では亜鉛(II),カドミウム(II)とも吸熱的で,小さな正のエントロピー変化を与えるのに対して,銅(II)の抽出は発熱的でより大きな正のエントロピー変化を与えたことから,銅(II)の抽出はエンタルピー的にもエントロピー的にも亜鉛(II)やカドミウム(II)よりも有利であることが分かった.