抄録
陽子のスピン1/2が,陽子を構成するクォークやグルーオンからどのようにつくられているか,は「陽子のスピンの問題」と呼ばれていて今日の物理学の基本的な問題の1つである.1980年代のEMC実験によって,陽子のスピン1/2に対するクォーク・スピンの寄与がたいへん小さい,ということが発見されたのが発端である.その後,世界の様々な粒子加速器を用いて荷電レプトン-核子偏極深非弾性散乱と偏極陽子-陽子衝突型実験によって研究が行われてきた.その結果,陽子スピンに対するクォーク・スピンの寄与は約1/3であることが明らかになった.陽子スピンに対するグルーオン・スピンの寄与の測定も行われており,理論研究も進展している.現在の研究がどこまで進んでいるかを解説する.