日本物理学会誌
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Niels Bohr の物理と方法
高林 武彦
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1985 年 40 巻 9 号 p. 662-675

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抄録

Niels Bohr は今世紀物理学の巨人として Einstein と並べられまた対比される. 彼は原子物理学の父であると同時に対応原理と相補性の提唱者でもある. これらの原理は Einstein の相対性原理の場合のようなスッパリとした明快さはなくいくらか曖昧さを許さねばならないようなものであるが, ミクロの物理学の方法論・認識論において指導的な役割を果たしてきた. Bohr の生涯の研究はその人間を刻印するような独自の連続性と coherence と深さをもっており, みだりに分断できない. 以下ではその径路をたどりながらその業績の意義と方法の特徴を具体的に考察し, その全体像にせまりたい. そこでは彼が幾多の英才たちとのきびしい討論の中で物理をおし進めていった経緯や, また彼の方法が成功しなかった局面などにもおのずからたち入ることになる. Bohr の論文はとかく長くなりがちであったが, この拙文もいきおい長くなる惧れがある. しかしなるべく簡単に書くよう心掛けよう.

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