日本物理学会誌
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乙女座銀河団中のセファイド型変光星の発見 : ハッブル定数と宇宙の年齢
斉尾 英行
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1995 年 50 巻 3 号 p. 213-215

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抄録

ハッブル宇宙望遠鏡の優れた解像度によって,乙女座銀河団内の渦巻銀河M100の中にある12個のセファイド型変光星(以後セファイドと記す)が発見された.それらの周期と明るさとの関係からM100までの距離が17.1±1.8Mpc(1Mpc ≃ 3.26×106光年)と決定された.宇宙膨張による乙女座銀河団の後退速度と,求められた距離とからハッブル定数がH0=80±17kms-1Mpc-1((8.2±1.7)×10-11yr-1)と決められた.ハッブル定数は,遠方の銀河の後退速度(V)とその銀河までの距離(D)との比を与え(V=H0D),現在の宇宙膨張の速さの指標である.仮に,宇宙の膨張が現在まで減速されなかったとした場合,宇宙が現在の大きさになるまでに要した時間はH-10~1.2×1010年となる.現実の宇宙には物質が存在しているので,仮想的な斥力を考えない限り,宇宙膨張は減速され続けてきていると考えられる.このような場合,宇宙が現在の大きさにまで膨張するのに要する時間はH-10よりも短いはずである.このことは,我々の銀河内で最も古い天体である球状星団の年齢が~1.7×1010年であると評価されていることと矛盾する.

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