日本物理学会誌
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宇宙線エネルギーの限界を探る : Telescope Array(宇宙線望遠鏡)の建設が始まる
福島 正己
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2005 年 60 巻 1 号 p. 20-27

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抄録

1020電子ボルト(eV)を超える巨大なエネルギーを持った素粒子が宇宙から飛来し,AGASAやHiResなどの空気シャワー観測装置で検出されている.これらの宇宙線は銀河系外の高エネルギー天体で発生し,長距離の宇宙空間を伝播して地球に到達したと考えられるが,到来方向には起源となる候補天体が見当たらず,その起源は謎である.またAGASAによる観測は,宇宙背景放射との衝突から期待されるエネルギー限界を超えてスペクトラムが続いていることを示しているが,HiResの観測はエネルギー限界の存在とほぼ一致している.「極高エネルギーの宇宙線は何処で生まれるのか」,「宇宙線のエネルギーに限界はあるか」を巡って続く議論に終止符を打つべく,大規模な観測装置の建設が南米アルゼンチンと米国ユタ州で始まった.宇宙ステーションからの観測も計画されている.新たな観測によって,極高エネルギー宇宙線の発生起源と伝播機構が解明され,標準的な素粒子と天体の理論を超える新たな物理への糸口となることが期待される.

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