2022 年 24 巻 1 号 p. 13-24
企業別労働組合の専従役員を対象に,役員経験を通した意識や行動の変容について探索的に検討することを目的とした。企業別労働組合での専従役員経験者16名を対象とした。半構造化面接は9問で構成され,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)で分析され,40概念,15サブカテゴリー,6カテゴリーとして整理された。専従役員としての役割遂行を通した意識や行動の変容は,【受任までの状況・心境】があり,【専従としての役割遂行】が進むなか,【専従としての意識の揺れ】と【組合員との関係性】および【社内外との関係性】が影響を与え,任期後の【現状にも影響】を及ぼすプロセスであった。専従役員として受任後,[専従初期の不安]を覚え[とまどいながらの専従業務]が始まる一方で,「組合員からの励ましや期待」をやりがいに,徐々に[業務推進力の向上]にもつながっていた。任期が進むなか[専従特有の苦労]と[専従としての覚悟]のもと,「組合員の声や課題を代弁」しつつ,「人事側のスタンスに苦労」しながら,[組合活動をリード]し,[対人能力も向上]していた。[社内外の人的サポート」が支えとなり,任期の終盤には[専従経験の意味づけ]が進み[役割をやり遂げ]ていた。専従経験は任期後の[働き方へ影響]し[現業への応用]につながるが,特に[経験の意味づけ]をしながら[役割をやり遂げ]たことや[対人力が向上]していること,および[社内外の人的サポート]が現状に影響を与えていた。