脳循環代謝(日本脳循環代謝学会機関誌)
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シンポジウム2 神経保護と神経再生
新規脳傷害モデル「光傷害」における脳組織再生とグリア細胞の活性化
森田 光洋
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2014 年 25 巻 2 号 p. 63-66

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抄録

頭部外傷に伴う脳組織の変性と再生を予測することは困難であり,このことが適切な治療方法の選択を困難にしている.頭部外傷の基礎研究が進展しない原因の一つとして,臨床を適切に反映した動物モデルがないことが挙げられる.ヒトでは頭蓋を破壊しない程度の物理的衝撃であっても脳挫傷を引き起こしうるが,これをげっ歯類などにおいて再現することは困難である.従来の頭部外傷モデルは,頭蓋を除去して露出させた脳実質に物理的衝撃を与えることによって作成されている.しかし,頭蓋除去はグリア細胞の活性化などを引き起こすため,こういったモデルでは変性が長期にわたって進行し,再生がみられる場合はほとんどない.この問題を解決するため,頭蓋の一部を薄削し,この部分から照射した光によって大脳皮質の一部を破壊する方法を開発した.この光傷害と名付けた方法を用いて,閉鎖性頭部外傷に伴う脳組織の変化を検討したところ,傷害24 時間後から出血が顕在化し,損傷部位は約1 カ月の間に縮小して脳挫傷を形成した.また,損傷の収縮過程において活性化ミクログリアが損傷内部に集積する一方,ネスチンを発現する活性化アストロサイトの突起が損傷周辺部位を覆い,この部分で顕著な組織再生が進行した.ネスチン陽性活性化アストロサイトは顕著な脂肪酸の取り込みを示したことから,損傷部位におけるエネルギー代謝を維持し,組織再生を促進しているのかもしれない.

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© 2014 日本脳循環代謝学会
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