脳循環代謝(日本脳循環代謝学会機関誌)
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虚血耐性現象の神経保護メカニズムと治療への応用
高橋 哲哉下畑 享良西澤 正豊
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キーワード: 神経保護, 虚血再灌流
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2015 年 26 巻 2 号 p. 197-202

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抄録

要旨 虚血耐性現象とは軽度の虚血負荷により内因性の耐性が誘導される現象で,代表的なものとしてIschemic preconditioning(IPC)がある.IPC は短時間の血流遮断により人工的に軽度の虚血状態を作ることで,引き続いて起こる虚血での障害が軽減される現象であり,複数の動物種で,また多数の臓器で確認されている.IPC は動物実験では強力な保護作用を持つものの,脳虚血が起きる前に行う必要があることから臨床応用は困難であった.しかしその後ischemic postconditioning と呼ばれる,脳虚血が起きた後に類似の血流遮断を行う手法,さらには脳への血流を供給する血管ではなく遠隔臓器の血流遮断(remote ischemic preconditioning/postconditioning)でも神経保護作用が確認され,臨床応用の可能性が広がった.近年,血栓溶解療法や血管内治療が発展し,血管再開通の可能性が上がっていることもあり,これらの虚血耐性現象のメカニズム解明および治療への更なる発展が期待される.

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© 2015 日本脳循環代謝学会
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