2010 年 10 巻 p. 85-99
ドッキングによるバーチャルスクリーニングは近年、創薬の中でますます重要になってきている。数々のドッキングプログラムやスコア関数が開発されてきているが、それらはバーチャルスクリーニングに対する期待に十分応えてはいなく、まだまだ、改良される余地があるといえる。本研究では、いくつかのドッキングスコアを組み合わせ評価するコンセンサススコアリングの考え方を導入・発展させ、DOCK, FRED, GOLDの3つのドッキングプログラムを使って、バーチャルスクリーニング精度向上のためのドッキングスコアの改良を試みた。ドッキングスコアはドッキングプログラムにおいて、通常、いくつかあるスコア成分の単純和として得られるが、本研究では、それぞれのスコア成分に適切な重み付けを行った。重みの最適化を行うにあたって、特定の標的タンパク質に偏らない汎用に使用できるドッキングスコアの開発のために、113の多様な標的タンパク質、及び、2000を超える「おとり」となる低分子化合物との結合予測結果を利用した。結果として、正しく検出できる標的タンパク質はドッキングプログラム単体で最大52.4%(GOLDにおいて36.8%から56.1%へ向上)向上させることができ、また、ドッキングプログラムを組み合わせることで最大、77.2%(GOLDとFREDの組み合わせ)向上し、約70%の標的タンパク質で正答を導き出せることが分かった。