2009 年 9 巻 p. 12-29
コイルドコイル領域中の柔軟な部位の検出システムを構築した。システムは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いてミオシンのロッド部分の折れ曲がりの観察、及び、その他のコイルドコイルを含むタンパク質を解析することによって評価した。本システムは2つのモジュールから構成されている。コイルドコイル中の周期のずれを検出するモジュールとコイルドコイルのコア領域における疎水性の低い領域および、アウトフィールド領域における疎水性の高い領域を検出するモジュールである。AFMによるミオシンの1分子観察の結果、主な折れ曲がり領域が4か所存在することが示された。本検出システムを用いてミオシンのアミノ酸配列を解析した結果、17か所の柔軟な領域があると予測したが、それらのうちの16か所が実験において折れ曲がった領域(4か所)に重なっていた。さらに予測した領域周辺の構造ゆらぎについても解析した。解析は、SCOPデータベースから取得したコイルドコイルの立体構造中の温度因子(B-factor)を計算した。その結果、コアで疎水性が低い領域は通常のコイルドコイルに比べて、構造ゆらぎが大きかった。逆に、アウトフィールドで疎水性が高い領域は構造ゆらぎが減少していた。これらの事実は、コイルドコイルの構造変化は、この2つの領域の均衡によって成り立つことを示している。本論文では、コイルドコイルの柔軟な部位周辺の動的な構造変化と生体機能との関連についても議論を行った。