中国・黄土高原では環境保全策「退耕還林」にともなう食糧・現金補助や労働構造の転換によって,地域住民は雑穀を中心とした自給自足を辞め,コムギ,コメを購買するようになった。しかし,こうしたコムギ,コメの産地の構成や食生活の変化が生じた背景には不明な点が多い。本研究では陝西省呉起県を事例にコムギ,コメの販売の生産元を調査した。その結果,コムギ,コメの生産元は,近隣穀倉地域,遠隔地となる全国規模の生産地,香り米を生産する国外産地の3つに大別でき,こうした流通が形成された背景として,生産地と消費地の地理的近接性,全国規模の流通ネットワーク,所得増加による食の嗜好の多様化が示唆された。