本研究は,アンケート調査結果の比較を通じて,野生復帰事業および対象種に対する住民意識の特徴を明らかにするものである。考察の結果,以下を導き出すことができた。それぞれの住民は野生復帰を肯定的に捉えていた。豊岡や佐渡では,「地域のシンボル」という認識が確立されつつある。新たな実施地である野田や越前では「環境にとっていい」という捉え方であった。一方で野生復帰の責任主体について,「誰も担わなくていい」や,実施主体の行政機関,「市(行政)」とする回答が総じて多かった。自らが野生復帰および対象種の生息を支える意識は,今後の事業展開を考えれば重要である。市民参加を土台とした「地域のシンボル」化が望まれる。