2014 年 24 巻 p. 15-22
2014年の春に、新潟県長岡市寺泊の信濃川大河津分水路河口付近に出現した1頭のコククジラについて陸上及び船上から観察を行った。確認できたコククジラの出没期間は3月21日から4月24日までにわたり、早朝から11時頃までによく出現した。出現範囲は河口を挟み距離3.7km、沖合50m~1.5kmで、右岸側でよく見られた。4月9日の船上からの観察では、コククジラの特徴である、中央部が盛り上がった吻部、背部後半部のコブ状の突起、体表の白斑がはっきりと観察された。体表にフジツボ類の付着は観察できなかった。体長は約10mでやや痩せ気味の成体と推測された。クジラは観察期間中、砂泥底の水深3~7mの場所に滞留し、潜水、浮上を繰り返し、泥を吐く場面も観察され、海底で摂餌をしていると推測された。このコククジラはエサを捕食しながら北上中の個体と考えられ、近年のコククジラアジア系統群における日本列島西側の回遊ルートの存在を示唆するものである。