茶業研究報告
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耐寒性を有した極晩生の煎茶用品種‘おくはるか’の育成
中島 健太宮崎 保博本多 勇介酒井 崇田中 江里佐々木 功二高橋 淳渕之上 康元北田 嘉一岡野 信雄京極 英雄内野 博司
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2014 年 2014 巻 118 号 p. 118_1-118_9

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抄録

耐寒性を有した極晩生の煎茶用品種‘おくはるか’は,埼玉県農林総合研究センター茶業研究所によって育成された。‘おくはるか’は埼玉20号を種子親,埼玉7号を花粉親として,1975年に交配したF1実生群の中から選抜した。2002年から2011年に埼玉42号の系統名で,14場所において栄養系適応性検定試験,裂傷型凍害およびもち病の特性検定試験が実施された。その結果,優良と認められ2013年に‘おくはるか’と命名し,出願公表された。
樹姿はやや開張型で樹勢は強い。摘採期は‘やぶきた’よりも6日(育成地では9日)遅い極晩生品種である。収量は‘やぶきた’より多収である。冬期の耐寒性は赤枯れ,青枯れはほとんどなく,裂傷型凍害にも強い。輪斑病およびもち病にはやや弱い。
製茶品質は,桜葉様の甘い香りとコクのあるうま味と甘味を有しており,一番茶・二番茶ともに香気と滋味が‘やぶきた’よりも優れる。加工特性は,蒸熱時間が短いほど‘おくはるか’特有の香気が醸し出される。
耐寒性に優れるため,関東以北の冷涼地および全国の中山間地に適している。

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© 2014 日本茶業学会
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