茶業研究報告
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海岸地帯で生産される茶のナトリウムイオン濃度
添加茶判別指標からみた問題点
中川 致之森藤 富士雄陳 風雷橋本 実千代山下 太市氏原 ともみ
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2002 年 2002 巻 93 号 p. 39-46

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抄録

添加茶判別時の指標とされるNa+濃度の測定値について,静岡県,鹿児島県,愛知県で生産された茶芽及び煎茶を試料とし,海岸からの距離を視点にした調査を行った結果,以下のような知見が得られた。
(1) 静岡県の沿岸部,中間部,山間部で生産される茶芽のNa+濃度の間には,統計的に有意差が認められた。
(2) 沿岸部で生産される茶芽では,添加茶の指標とされるNa+濃度を超えているものが見受けられた。
(3) 鹿児島県産煎茶のNa+濃度についても,静岡県の茶芽と同様に,沿岸部,離島のものは高く,山間部のものは低い傾向があり,種子島産の煎茶では指標値を超えているものがあった。
(4) 従って,沿岸部で生産される茶については,添加の有無をNa+の測定により判別することは不可能であり,グルタミン酸とテアニンの比率など,他の観点による判断が必要であると考えられる。
(5) 茶芽中のNa+濃度は,降雨により著しく低下することが認められ,Na+濃度が高い原因は海水の飛沫の付着によると推測された。
(6) 茶園土壌のナトリウム含有量については,海岸からの距離による差は認められなかった。

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