抄録
1. 分娩中の産婦にCeftizoximelgをone shotで静注して, 母体血, 羊水および膀帯血の濃度変化を迫及した。その結果, まず母体血清中濃度は, 投与後1時間で平均24.4μg/ml, 2時間で14.8μg/ml, 3時間で7.4μg/ml, 4時間で3.6μg/ml, 7時間で0.4μg/mlと漸減したが, これに対し胎児血濃度は投与後1時間で平均12.4μg/ml, 2時間で10.2μg/ml, 3時間で10.7μg/ml, 4時間で5.8μg/ml, 8時間で1.5μg/mlと, 母体投与後1~2時間で平衡となり, それ以後は母体血より高濃度であることが観察された。
2. 母体投与後の羊水中濃度は投与後1時間で平均7.3μg/ml, 2時間商で13, 2μg/ml, 3時聞で20.3μg/ml, 4時間で18.0μg/ml, 5時間で19.5μg/ml, 7時間で14.4μg/mlと緩徐に上昇した後は高濃度が長時間維持され, 母体に対して薬剤のreservoirとして働いていることが観察された。したがって羊水感染の場合, 母体に1gのCeftizoximeをone shotで静注しても有効濃度が投与後8時間以上維持されることが判明した。
3. 17例の骨盤死腔炎, 子宮旁組織炎, 子宮附属器炎, 子宮内感染など産婦人科領域の感染症に, Ceftizoximeを1日2~4g, 5~10日間投与して臨床効果を追及した。その結果, 有効率は88.2%であり, Ceftizoxitne投与によると思われる副作用はみとめられなかった。
4. これら17例の感染症から25株の病原菌が分離されたが, そのうち13株はE. coliであった。これらに対してMICを測定した結果, 接種菌量が108/mlでは10株が0.2μg/ml以下, 全部が1.56μg/ml以下であり, 接種菌量が106/mlでは全株が0.1μg/ml以下のMICを示し, 他のCefotiam, Cefmetazole, Cefamand fle, CEZなどと比較してはるかに高い薬剤感受性が観察された。またK. pneumoniae, Hafnia alvei, P. morganii, S. aureus, Streptececcus spp.にも高い感受性が観察され, Ceftizoximeは細菌学的にも有効なcephalosperin剤と考えられた。