CHEMOTHERAPY
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TA-058の人組織内濃度について
葛西 洋一中西 昌美西代 博之吉本 正典沢田 康夫橋本 伊久雄中村 孝三上 二郎斉藤 美知子戸次 英一山口 東太郎
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1984 年 32 巻 Supplement2 号 p. 440-451

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抄録
腹膜炎を合併せる急性虫垂炎12例, 胆道系感染症5例, 癌を原因とする腸閉塞症に合併の汎発性腹膜炎3例および十二指腸潰瘍1例の計21例の患者の手術にさいして, 術前または術中にTA-058 1gを薄注し, 各種体液, 組織を術中に採取し, TA-058濃度を測定した。測定法はM.luteus ATCC 9341またはE.coli ATCC 27166を検定菌とするbioassay法である。総胆管胆汁内濃度は114.48~520.0 (平均256, 74±131.79) μg/mlを示し, 胆嚢内胆汁でも, 胆嚢管閉塞例で29, 4μg/ml, 胆嚢管開存例では285.0μg/mlに達した。胆嚢壁内濃度は5.3~32.7 (平均16.3±9.44) μg/gを示した。急性虫垂炎における虫垂壁内濃度は炎症程度に比例し, 重症例では高濃度の移行を示した。膿腫性虫垂炎3例において, 虫垂壁内濃度よりも内容の膿汁内濃度が高濃度を示し, また腸閉塞を伴った汎発性腹膜炎では漿液性の腹水では低濃度であったが, 膿性の腹水では短時間で高濃度に達し, 長時間高濃度を維持していた。このことは膿瘍壁よりも内容の膿汁への移行が良好なことが示唆され, TA-058の大きな特長と考えられる。12例の病巣より起炎菌を分離し得たが, その大部分は複数菌であった。TA-058の病巣内濃度は起炎菌の大部分めMICを大幅に上廻っており, TA-058の腹部炎症性疾患に対する有用性が示唆されたといえる。
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© 社団法人日本化学療法学会
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