抄録
経口ペニシリン剤として開発されたAmpicillinのエステル体Lenampicillin (KBT-1585, LAPC) のin vivoおよびin vitroの抗菌力について検討し, 以下のような結果を得た。
1. KBT-1585のEscherichia coli NIHJ JC-2に対するin vitro殺菌効果は, Ampicillin (ABPC) より遅れて発現するが, ヒト血清で処理すると, 3位側鎖が加水分解されABPCが遊離するため, ABPCと同等の効果が得られた。
2. KBT-1585をヒト血清, マウス血清およびマウス腸管homogenateで処理すると, bioautogram上で, ABPCと同じ位置にのみ抗菌活性のスポットを認め, 本剤が生体内ではABPCとして作用することが確認された。
3. KBT-1585のMICおよびMBCは, KBT-1585がin vitroで分解する過程で生ずるdiacetylおよびacetoinの存在下においても変動せず, 抗菌力への影響は認められなかった。
4. KBT-1585を経口投与後のマウス血清中濃度は15分でピークに達し, Bacampicillin (BAPC) と同等であり最高濃度はABPCより約5倍高く, BAPCより低かった。
5. 経口投与によるマウス実験的感染症の治療効果は, KBT-1585とBAPCは, ほぼ同等でありABPCより良好であった。