1995 年 43 巻 11 号 p. 1031-1035
PCR法を応用して, 検査材料中に存在する肺炎球菌を直接的に検出する方法を検討した。対象とした検査材料は, 小児の急性気道感染症からの咽頭拭い液288検体である。PCRには, 肺炎球菌に特有の自己融解酵素遺伝子 (lytA) の694bpから966bp領域を増幅することのできるブイラマーを設計した。本方法の検出感度は1.2×102CFU/ml, 結果が得られるまでの所要時間は検査材料の処理も含めて約2.5時間であった。PCRの実行と同時に菌の培養も行い, 両方法における検出率の比較を行った。培養による肺炎球菌の検出率は288例中59例 (20.5%) であったのに対し, PCRでは118例 (41.0%) が陽性と判定された。これらのうち, 103CFU/ml以上の肺炎球菌が検出された検体では, PCRでもすべて陽性であった。培養で菌が証明できなかった検体でも, PCRで明らかなDNA断片が認められたものもあった。これらのことから, 肺炎球菌の検出には, PCRによって検体から直接菌の有無が確認できる本方法は臨床的に有用であろうと考えられた。