日本化学療法学会雑誌
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抗菌薬による緑膿菌からのエンドトキシン遊離
Imipenem, ceftazidimeを中心に
宮良 高維伊志嶺 朝彦斎藤 厚
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1995 年 43 巻 3 号 p. 351-356

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抄録

マウスの緑膿菌による腹腔内感染モデルを同菌に対して作用点の異なるimipenem (IPM) とceftazidime (CAZ) の2つのβ-lactam系抗菌薬で治療し, 抗菌薬により誘発されたエンドトキシン血症のパターンを検討した。グラム陰性桿菌 (GNR) に対し, その隔壁形成に関与するpenicillin binding protein (PBP) 3に比較的親和性の強い抗菌薬は菌体にフィラメント化をきたす。その結果, 菌体の容積が増大し, carbapenem系抗菌薬のように主にPBP2を阻害する抗菌薬と比較して, 溶菌の際に菌体から放出されるエンドトキシン量が多くなるというin vitroの検討にもとついた報告がこれまで多くなされている。しかし, 本稿におけるin vivoの成績は, 治療後早期に高いエンドトキシン血症を起こしたのはむしろIPMの方であった (2時間値, P<0.05)。また, 我々のin vitroの検討結果では, inoculum sizeが小さい系 (105CFU/ml) では形態変化にほとんど差を認めず, 殺菌速度, 遊離エンドトキシン量も両薬剤間で差は認められなかった。しかし, inoculum sizeが大きい系 (107CFU/ml) ではIPMは強力な殺菌力を維持するが, CAZの殺菌力は低下する結果が得られた。したがって, IPMの強力な殺菌が短時間に進行するため, 抗菌薬添加後早期では培養液中に遊離されるエンドトキシンはIPMの方が有意に高い成績が得られた (P<0.05>)。これらから, in vivoでエンドトキシンは常にscavengingを受け末梢血から除去されるため, inoculum effectを受けにくいIPMの強力な殺菌力が感染菌量の多い敗血症マウスにおいては一過性のエンドトキシン値の上昇をきたしたと考えられた。以上の成績から, 抗菌薬に誘発されるエンドトキシン血症をin vitroの検討から予想する場合においては, scavengingを考慮するとエンドトキシン遊離速度が最も重要な指標となると考えられる。

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