日本化学療法学会雑誌
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プロドラッグ型経口用セフェム薬cefteram pivokilの高齢者における体内動態
稲松 孝思深山 牧子Akihiko KatoMasanori Nishinaga
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1995 年 43 巻 3 号 p. 366-370

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抄録

Prodrugである経口用セフェム剤, cefterampivoxi1の高齢者における体内動態を検討した。明らかな肝・腎障害のない高齢者5例 (65~87歳, 平均78.2歳, 男2例, 女3例) に本剤100mgを空腹時に経口投与し, 血中, 尿中のcefteram濃度推移をbioassayにて測定した。ピーク値は服薬後1~3時間にあり, 0.72~1.9μg/mlの濃度を示した。1症例では, 服薬後2時間目に初めて血中に出現したが, 消化管内移送の遅れによると推定された。服薬後24時間までの尿中回収率は, 13, 7%であった。血中半減期は1.4時間, AUCは5.18h・μg/mlであった。若年ボランティア群における報告値と比較すると, 高齢者では'服薬後2時間までは同様の血中濃度を示すが, 以後は高い濃度が得られた。服薬後血中濃度がピークに達するまでは吸収の遅延と排泄の遅延が相殺しあって同様の血中濃度推移をとり, その後は排泄遅延の影響が明らかになった結果と推定された。また, 腸管エステラーゼによるプロドラッグの活性化が高齢者で遅延しているとしても, その影響は少ないと思われる。これらの成績から, 80歳代の高齢者であっても, 常用量程度の用量であれば1日2回の投与に支障はないと言える。

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