日本化学療法学会雑誌
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臨床分離黄色ブドウ球菌株にみられるGyrA蛋白serine-84変異の検討
高橋 洋庄司 聡菊地 宏明渡辺 彰貫和 敏博本田 芳宏徳江 豊
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1995 年 43 巻 5 号 p. 515-519

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抄録

黄色ブドウ球菌のニューキノロン薬耐性機構の重要な一つであるGyrA蛋白変異について臨床分離株における分布を検討した。1992年度の東北地方における黄色ブドウ球菌臨床分離株110株に関してpolymerase chain reaction (PCR) および制限酵素Hinf I処理を用いて, GyrA蛋白のserine-84部位 (Ser-84) におけるpointmutationの有無を間接的に検討した。その結果,(1) ofloxacin (OFLX) のMICが2μg/ml以下の感受性株にはSer-84変異は存在せず, 逆に16μg/ml以上の中等度~高度耐性株は全株がSer-84変異株であった。MICが4μg/mlから8μg/mlの範囲には変異株と少数の変異のない株が混在しており境界領域と考えられた。(2) OFLX以外の8種類のニューキノロン薬での変異株と変異のない株との分布はいずれもOFLXの場合と類似したが, その境界領域の値はそれぞれの薬剤で異なっていた。(3) メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) とメチシリン感受性黄色ブドウ球菌 (MSSA) およびmecA遺伝子保有MSSAの3群に分けてこの変異の有無を比較しても特別な分布差は認められず, Ser-84変異の有無とメチシリン耐性度, あるいはmecA遺伝子の有無との間には本質的に関連はないものと考えられた。

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