日本化学療法学会雑誌
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ピリドンカルボン酸系抗菌薬の臨床薬理学的検討 (3)
ヒトでの薬物動態の比較および動物実験データから予測性の検討
中島 光好小菅 和仁梅村 和夫滝口 祥令近藤 一直水野 淳宏植松 俊彦渡辺 裕二
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1995 年 43 巻 6 号 p. 647-654

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抄録

本邦において新規に開発中および近年実用化された8種のピリドンカルボン酸系抗菌薬temafloxacin (TMFX), grepafloxacin (GPFX), Y-26611, balofloxacin (BLFX), pazufloxacin (PZFX), NM 441, AM-1155およびDU-6859aの健常人における体内動態の成績を, 市販の代表的薬剤ciprofloxacin (CPFX), ofloxacin (OFLX) およびsparfloxacin (SPFX) を対照として比較した。血中濃度から, TMFX, BLFX, AM-1155, DU-6859 a はOFLXに, Y-26611はCPFXに, GPFX, NM 441はSPFXにそれぞれ類似した推移を示した。PZFXはt1/2は短くCmaxが高い新しいタイプの血中濃度推移であった。尿中回収率を比較すると, TMFX, BLFX, PZFX, AM-1155, DU-6859 a はOFLXに'Y-26611, NM441はCPFXに, GPFXはSPFXにそれぞれ類似した尿中排泄を示した。本系統薬の治療効果に重要な因子とされるAUC/MICにもとついたこれら薬剤の投与設計の結果, GPFXおよびNM441は, 体内動態の類似したSPFXと同様に投与回数の減少が可能であるが, NM441の場合には用量の増加が必要と考えられた。また, TMFX, BLFXおよびAM-1155はOFLXと同じ用量で効果の増強が得られること, さらにDU-6859aでは減量が可能なこと, そしてY-26611では増量の必要性が示唆された。実験動物での薬物速度論パラメータと健常人におけるそれとの関係について, 前報で検討した薬剤を加えた16剤での成績をBoxenbaumの方法で再度解析した。見かけの血漿クリアランス, 腎クリアランスおよび定常状態の見かけの分布容積のいずれにおいても, 検討したマウス, ラット.ウサギ, イヌおよびサルの5種のうちウサギの値がヒトとよく相関した。一方, 消失相半減期はイヌの値のみヒトと有意な相関性を示した (r=0.617)。今回の検討により, あらたに開発される本系統薬剤のヒトにおける体内動態は, 適切な実験動物を選択し, 検討を加えることによりおおまかに推定できることが示唆された。

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