日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
尿路感染症に対するgrepafloxacinの基礎的・臨床的検討
岩澤 晶彦広瀬 崇興熊本 悦明
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 43 巻 Supplement1 号 p. 352-359

詳細
抄録

新しいニューキノロン系抗菌薬であるgrepafloxacin (GPFX) について基礎的, 臨床的検討を行った。
1) 基礎的検討: 教室保存の尿路感染分離菌12菌種559株に対するGPFXのMIC値をofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX), norfloxacin (NFLX) との間で比較した。グラム陽性球菌であるStaphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidis, Enterococcus faecalis, Enterococcus faeciumに対するGPFXのMIC90値はおおむね8μg/ml以下で, 他の比較薬と比べて優れた抗菌力を示した。一方, グラム陰性桿菌に対するMIC90値はPseudomonas aeruginosa, Serralia marcescensの32μg/ml, Enterobacter spp. 8.0μg/mlを除いてはすべて0.5μg/ml以下という優れた抗菌力であった。また, Chlamydia trachomatis標準株 (D株) に対してのMIC rangeはテトラサイクリン系抗菌薬と同等で0.031~0,063μg/mlであり, キノロン系の中ではsparfloxacinと同様に強い抗菌力を示した。
2) 臨床的検討: 急性単純性膀胱炎3例および複雑性尿路感染症7例の計10例に本薬を投与した。急性単純性膀胱炎3例はUTI薬効評価基準判定では全例著効, 主治医判定では全例が有効以上であった。細菌学的効果は3株すべてが消失していた。また複雑性尿路感染症では7例中5例がUTI薬効評価基準により評価可能であり, 5日目判定で著効1例, 有効1例, 無効3例で有効率2/5であった。無効例にはEscherichia coli, P. aeruginosaを含む複数菌感染例が2例含まれていた。自他覚的副作用および臨床検査値の異常変動は, 今回GPFXを投与した10例全例で認められなかった。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top