日本化学療法学会雑誌
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尿路・性器感染症に対するpazufloxacinの基礎的・臨床的検討
後藤 博一小野寺 昭一清田 浩鈴木 博雄川原 元遠藤 勝久五十嵐 宏細部 高英斑目 旬大石 幸彦斎藤 賢一三谷 比呂志
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1995 年 43 巻 Supplement2 号 p. 324-331

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抄録

尿路感染症に対するpazufloxacin (PZFX) の有用性を明らかにする目的で, 基礎的にはPZFXの抗菌力に及ぼす尿のpH, 二価陽イオンの影響とPZFXの白血球殺菌能に対する影響について検討し, 臨床的には尿路. 性器感染症に対するPZFXの有効性と安全性について検討した。
1. PZFXの尿中抗菌力と尿のpH, 二価陽イオンの影響PZFXの試験管内抗菌力を尿を培地として測定し, 尿の性状 (pH, マグネシウム濃度, カルシウム濃度) の違いによる影響について検討した。被験菌株はEscherichia coli NIHJ JC2とPseuaomonas aeruginosa 18Sの2株である。その結果, E. coliに対するPZFXの尿中抗菌力に及ぼす尿のpH, 二価陽イオンの影響はあまりみられなかった。P. aemginosaについては, 尿のpHが低いほどPZFXの尿中抗菌力が低下した。
2. 白血球殺菌能に及ぼすPZFXの影響健常人1名の末梢血から分離した好中球および単球を, PZFX存在下と非存在下にてphorbolmyristate acetateあるいはオプソニン化ザイモザンで刺激し, 白血球殺菌能の指標であるスーパーオキサイド産生能をケミルミネッセンス法により測定した。その結果, 好中球の殺菌能はPZFX存在下で濃度依存的に増強される傾向を認めた。
3. 尿路性器感染症に対するPZFXの臨床的検討急性単純性膀胱炎1例, 急性単純性腎孟腎炎1例, 急性前立腺炎2例, 複雑性尿路感染症14例の計18例にPZFXを投与し, その有効性と安全性について検討した。UTI薬効評価基準を満たした急性単純性膀胱炎の1例と急性前立腺炎の1例は著効, 急性単純性腎盂腎炎の1例は有効であった。複雑性尿路感染症の13例に対する本剤の臨床効果は, 著効4例, 有効7例, 無効2例で, 総合有効率は84.6%であった。細菌学的には, 複雑性尿路感染症から分離された9菌種23株のうち19株が除菌され, 除菌率は82.6%であった。本剤投与による自他覚的副作用は, 1例に軽度の眩暈が認められた。臨床検査値の異常は全例認められなかった。
以上より, 本剤は優れた生体内効果が期待され, 尿路性器感染症の治療薬として有用であると考えられた。また, 患者の尿のpHに注意しながら, 本剤の有効性の予測を考慮すべきと考えられた。

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