日本化学療法学会雑誌
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外科領域におけるpazufloxacinの基礎的・臨床的検討
国松 正彦岩井 重富古畑 久大塚 一秀中川 良英裴 正徳佐藤 毅加藤 高明新井 尚之村中 博加沢 玉恵増田 英樹須田 清美椨 真由美田中 隆
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1995 年 43 巻 Supplement2 号 p. 394-401

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抄録

新しく開発されたニューキノロン系経口抗菌薬pazufloxacin (PZFX) について外科領域における基礎的・臨床的検討を行った。
1) 抗菌力
本薬剤の抗菌力をcefaclor (CCL), ofloxacin (OFLX), tosufloxacin (TFLX) と比較した。本薬剤はcoagulase-positive staphylococci (CPS) およびcoagulase-negative staphylococci (CNS) に対してはTFLXより劣るがOFLXとほぼ同等の抗菌力を示した。Escherichia coliに対しては OFLX, TFLXと同様優れた抗菌力を示した。Klebsiella pneumoniaeに対しては本薬剤が最も優れた抗菌力を示していた。Enterobacter cloacaelこ対しては本薬剤の抗菌力はOFLX, TFLXよりやや劣るものの, 大部分の株に対しMIC値は0.2μg/ml以下であった。Pseudomonas aeruginosaに対しても本薬剤はTFLXと同等の抗菌力を示した。しかし, methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) に対しては他のキノロン薬と同様に本薬剤の抗菌力は十分ではなかった。
2) 臨床的検討
肛門周囲膿瘍および皮膚軟部組織感染症を主とする外科的感染症19例に本薬剤を使用し, そのうち臨床効果判定が可能な18例の臨床効果は著効4例, 有効11例, やや有効1例, 無効2例で, 有効以上の有効率は83.3%であった。また, 本薬剤服用後の血中濃度を臨床例9例について100mgまたは200mgの食後の経口投与にて検討した結果, 少なくとも100mgの投与でおよそ0.3μg/ml以上の血中濃度が投与後5時間以上は期待されるものと思われた。本薬剤によると思われる自他覚的副作用としては1例に嘔気を認めたのみであり, また, 臨床検査値の異常変動は認められなかった。
以上より, PZFXは外科領域の感染症にきわめて有用な薬剤と考えられる。

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