日本化学療法学会雑誌
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尿路性器感染症におけるritipenem acoxilの基礎的・臨床的検討
後藤 俊弘川原 元司北川 敏博江田 晋一川原 和也大井 好忠山内 大司萱島 恒善西山 賢龍牧之瀬 信一川畠 尚志
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1995 年 43 巻 Supplement3 号 p. 264-270

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抄録

新しく開発された経口ペネム系抗生剤ritipenem acoxil (RIPM-AC) の尿路感染症 (UTI) 分離菌に対する抗菌力, 前立腺液・前立腺組織移行, ならびに尿路性器感染症に対する有効性・安全性を検討した。
UTI患者尿由来の11菌種261株に対するRIPMの最小発育阻止濃度 (MIC) を測定し, 対照薬のcefaclor (CCL), cefpodoxime (CPDX), ciprofloxacin (CPFX) と比較した。Staphylococcusaureus, coagulase negative staphylococci (CNS), Enterococcus faecalis のグラム陽性菌に対するRIPMのMIC90 (μg/ml) は, 100, 12.5, 25であり, S. aureus に対してはCPFXとほぼ同等, CNS, E. faecalis に対しては対照薬よりも強い抗菌力を示した。Escherichia coli, Citrobacterfreundii, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacae, Serratia marcescens, Proteusmirabilis, Proteus vulgaris, Pseudomonas aeruginosa のグラム陰性菌に対するRIPMのMIC90 (μg/ml) はそれぞれ0.78, 6.25, 3.13, 12.5, >400, 3.13, 25,400であり, S. marcescensP. aeruginosaを除く各菌種に良好な抗菌力を示した。
RIPM-AC200mg単回投与90分後のRIPMの血漿中, 前立腺液中濃度 (μg/ml) はそれぞれ0.40, 0.06,130分後の血漿中, 前立腺組織内濃度 (μg/g) はそれぞれ0.54, 0.55であった。また, 400mg単回投与90-95分後 (n=3) のRIPMの血漿中濃度は平均で0.56μg/ml, 前立腺液中濃度および前立腺組織内濃度は各1例で測定限界値以上の測定値が得られ, それぞれ0.08μg/mlおよび0.24μg/gであった。
複雑性UTI 8例, 急性精巣上体炎6例, 急性前立腺炎1例, 慢性前立腺炎1例, 男子尿道炎1例の計17例を対象に, RIPM-ACを1回150-300mg, 1日2-3回経口投与し, 有効性, 安全性を検討した。UTI薬効評価基準に従って判定すると, 複雑性UTI8例では, 著効1例, 有効3例, 無効4例, 急性前立腺炎1例は著効であった。急性精巣上体炎6例に対する効果は, 著効2例, 無効2例であった。全例でRIPM-ACの投与による自他覚的副作用ならびに臨床検査値の異常変動は認められなかった。

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